「長期投資予想/アセットアロケーション分析」ではアセットアロケーションを分析することは可能だが、効率的フロンティア上のアセットアロケーションを求める方法は提供されていない。これを求めるには、現代ポートフォリオ理論(MPT)におけるポートフォリオ最適化問題を解く必要がある。
これはそれほど難しいことではなく、Excelのソルバーを使うと簡単に解ける。このことは個人投資家にも広く知られていて、多くの人がそのためのExcelのシートを作成している。私も過去に作成したことがある。しかし手元には見当たらず、インターネット上にも良いものがなかったので、あらためて作成してGoogleドライブに置いた。以下はそのスクリーンショットだ。
期待リターンとリスクおよび相関係数の推計値は「期待リターンとリスクおよび相関係数」で紹介したものを入力してある。D3~D8にアセットアロケーションを入力すると、リスク、期待リターン、シャープレシオ、後述するVaR (99%)を算出できる。その他の資産の推計値が手元にある人はシートの保護を外して入力してほしい。
セルA16に許容できるリスクを入力して「リスクに基づく最適化」ボタンを押すと、そのリスクで期待リターンの最も高い、最適化されたアセットアロケーションがD3~D8に表示される。「プロジェクトまたはライブラリが見つかりません」というエラーになったら、開発タブのアドインで「ソルバーアドイン」を有効にしてほしい。
問題はどの程度のリスクを許容するかだ。リスクはリターンの標準偏差であり、リターンの確率分布は正規分布である。リスクが10%ならリターンは期待リターンの±10%の範囲に68.26%の確率で収まり、±20%の範囲に95.44%の確率で収まる。リスクの説明としてはこれで正しいが、資産運用設計の目安としては直観的ではない。
金融資産のリスク分析に用いられる指標にValue at Risk (VaR)がある。これは一定確率の範囲で想定される最大の損失をあらわす。99%のVaRが-10%なら99%の確率で10%以内の損失に収まることを意味する。こちらのほうがリスクよりわかりやすい。99%のVaRが-10%のアセットアロケーションを求めるには、A19に-10を入力して「VaR (99%)に基づく最適化」ボタンを押せばいい。
最適化されたアセットアロケーションを算出すると、どれも国内債券の割合が高くなることがわかる。以前紹介したGPIFの推計値でもこの傾向は変わらない。MPTの基本は、値動きの相関の小さい資産を組み合わせて全体のリスクを下げることにある。国内債券は他との相関がほぼゼロかマイナスなので必然的に割合が高くなる。
今のところ国内債券は魅力のあるアセットクラスではない。国内債券の割合を高めて、最適化されたアセットアロケーションを組んでいる個人投資家は少ない。私のアセットアロケーションも国内債券はゼロであり、効率的フロンティアから離れている。Excelで最適化されたアセットアロケーションを算出しても、皆その通りには運用していない。まあそういうものなのだ。
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