2012年11月26日月曜日

長期分散投資は本当にもうかるのか

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長期分散投資をしようとして投資信託の成績を調べてはみたものの、本当に投資する意味があるのか疑問に思う人が多いはずだ。投資信託の評価額をあらわす基準価額は、運用を開始(設定)したときには10,000円である。投資信託の今の基準価額を見ると、10,000円を超えているものはとても少ない。2割引きや3割引きは当たり前で、中には半値に近いものもある。

基準価額は資産の評価額が下がったときだけではなく、投資家に分配金を出したときにも下がる。基準価額の下落幅より受け取った分配金が多ければリターンはプラスである。しかし分配金を考慮しても、設定以来のリターンがプラスの投資信託は少ない。このことは、投資信託をどう組み合わせても、長期分散投資が報われない可能性を示唆している。

外国の資産に投資する投資信託のリターンがマイナスなのは、円高が進んだことが原因だ。10年前の1ドルは122.1円だった。直近では82.41円なので為替だけで32.5%もリターンが押し下げられている。5年前は1ドル107.3円だったので23.2%下落している。ユーロは10年前からは11.7%の下落だが、5年前からだと33.0%も下落している。
USD/JPYの10年間のチャート
運用資産のリターンが大きくプラスであれば、為替によるマイナスをくつがえすことができる。しかし、株価は2008年のリーマンショックで世界的に大暴落している。2010年のギリシャ危機を発端とする欧州債務危機も株価を押し下げている。この状況下で株式運用のリターンを大きくプラスにするのは難しい。信用不安でヨーロッパの債券が下落しているため、外国の債券のリターンも押し下げられている。

為替リスクのない日本の株式の投資信託のリターンも大きくマイナスである。東証一部上場株式全体の値動きをあらわす指数TOPIXを見てみると、10年前の2002年からは10.2%の下落だが、5年前の2007年からはなんと52.3%も下落し半分以下になっている。これは2008年にリーマンショックがあったためだ。TOPIXに連動するインデックスファンドのリターンはこれとほぼ一致する。
TOPIXの10年間のチャート
日本でも外国でも同じことが言えるが、株式の投資信託の設定以来のリターンを比較するときには設定の時期に注意してほしい。リーマンショックの影響はとても大きいので、リーマンショックのかなり前か、直前か、その後かによってリターンがまったく異なる。

2000年以前に設定された投資信託については、2001年から2002年のITバブル崩壊まで考慮する必要がある。ただし、ITバブル崩壊前に設定された投資信託は少ない。一般投資家が購入できる投資信託が日本で数多く運用されるようになったのは、1998年の金融ビッグバンと呼ばれる金融システム改革以降だからだ。

これまで述べてきたように、多くの投資信託の設定以来のリターンがマイナスなのは、円高、リーマンショック、欧州債務危機という三つの大きなマイナス要因が偶然続いたことによるものだ。現在のリターンを見て、将来のリターンを悲観する必要はないと私は考えている。

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