基準価額は資産の評価額が下がったときだけではなく、投資家に分配金を出したときにも下がる。基準価額の下落幅より受け取った分配金が多ければリターンはプラスである。しかし分配金を考慮しても、設定以来のリターンがプラスの投資信託は少ない。このことは、投資信託をどう組み合わせても、長期分散投資が報われない可能性を示唆している。
外国の資産に投資する投資信託のリターンがマイナスなのは、円高が進んだことが原因だ。10年前の1ドルは122.1円だった。直近では82.41円なので為替だけで32.5%もリターンが押し下げられている。5年前は1ドル107.3円だったので23.2%下落している。ユーロは10年前からは11.7%の下落だが、5年前からだと33.0%も下落している。
USD/JPYの10年間のチャート |
為替リスクのない日本の株式の投資信託のリターンも大きくマイナスである。東証一部上場株式全体の値動きをあらわす指数TOPIXを見てみると、10年前の2002年からは10.2%の下落だが、5年前の2007年からはなんと52.3%も下落し半分以下になっている。これは2008年にリーマンショックがあったためだ。TOPIXに連動するインデックスファンドのリターンはこれとほぼ一致する。
TOPIXの10年間のチャート |
2000年以前に設定された投資信託については、2001年から2002年のITバブル崩壊まで考慮する必要がある。ただし、ITバブル崩壊前に設定された投資信託は少ない。一般投資家が購入できる投資信託が日本で数多く運用されるようになったのは、1998年の金融ビッグバンと呼ばれる金融システム改革以降だからだ。
これまで述べてきたように、多くの投資信託の設定以来のリターンがマイナスなのは、円高、リーマンショック、欧州債務危機という三つの大きなマイナス要因が偶然続いたことによるものだ。現在のリターンを見て、将来のリターンを悲観する必要はないと私は考えている。
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