特定口座のいいところは、源泉徴収ありなら基本的に確定申告しなくてもいいことだ。これは単に手間が省けるということではない。株式の譲渡所得や配当所得は、国民健康保険の保険料の算出や、配偶者控除や扶養控除の判定に用いられる。どれだけ譲渡所得や配当所得があっても、確定申告しなければこれらには影響しない。しかし確定申告するとアウトだ。
確定申告で損失の繰越控除を受けたり、損益の通算をしたりすると、ほとんどの人は節税になる。しかし配偶者控除や扶養控除の対象者は、確定申告で所得の上限を上回らないように注意しないといけない。国民健康保険の人は、確定申告による源泉徴収の還付を保険料の値上がりが上回らないよう注意する必要がある。
損失の繰越控除にも罠がある。損失の繰越制度を用いて過去の損失と本年の所得を損益通算すると、本年の源泉徴収の一部あるいはすべてを取り返すことができる。国民健康保険の保険料は損益通算後の所得で算出されるが、配偶者控除や扶養控除の判定は損益通算前の所得で行われる。過去の大きな損失と本年の大きな所得を損益通算すると、本年の所得で判定が行われることになる。これを避けたければ確定申告をしてはいけない。
配当の特定口座への受け入れも善し悪しだ。特定口座に配当を受け入れると、確定申告をしなくてすむか、するとしても申告書の記入が非常に楽になる。しかし確定申告するときには、譲渡所得と同時に必ず配当所得も申告することになる。これは上に挙げた算出や判定に影響する。特定口座に配当を受け入れなければ、確定申告のときに配当所得を取り除くことができる。
特定口座に配当を受け入れない場合には、配当所得を総合課税で申告することも可能になる。給与がある人で配当込みの課税所得が330万円以下の場合には、総合課税で申告すると配当の税率が7.2%に、195万円以下なら2.2%になる。申告書の記入は煩雑になるが、配当所得を特定口座に受け入れなければ、このような節税が可能になる。
まとめ
- 源泉徴収ありの特定口座の人は確定申告をなるべく避けよう
- 確定申告するときには裏目にならないよう注意しよう
- 特定口座に配当を受け入れずに節税できないか考えよう
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